近い将来に黄金世代となるであろう高校生たちの負けられない戦い

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日本の高校生のスポーツと言えば高校野球と高校サッカーが花形であり、ゆくゆくはメジャーやヨーロッパで活躍するのではないかと期待される選手たちのプレーに、ファンたちは目を見張る。もちろん花形競技以外でも、ゆくゆくは各競技を代表する選手となるべく高校生たちはその時を戦っている。ある競技において数年に一人と目されるような選手が現れた時、その競技の国内の関係者やファンは、その選手の将来に大きな期待を抱きながら見守ることだろう。

マイナースポーツの一つであるとも言えるとあるモータースポーツ(4輪)の世界に、そうした高校生であると目される選手が存在している。しかも一人ではなく、複数である。

日本モータースポーツ界黄金世代誕生の予感

わたしは彼らが日本のモータースポーツにおける黄金世代となることを期待している。ただ、期待する必要もないほど、時間を経る度に、それはデータに基づく、可能性の高い未来と考えられるようなものになっている。

4輪のモータースポーツの頂点と言われるF1を目指す若い選手たちは主に、15歳までレーシングカート(遊園地のゴーカートのような形状の車。最高速度は130キロ)競技に参加し、16歳以上は、カートよりも高速な、F1に似た形状のマシン(このようなマシンは、カートと区別して「4輪」あるいは「シングルシーター」と呼ばれている)を扱う競技に参加することが許される。彼らは現在、シングルシーターのF4というカテゴリーで負けられない戦いを繰り広げている。

彼らとは、宮田莉朋(みやたりとも)、阪口晴南(さかぐちせな)を中心とする、いずれも1999年生まれのまだあどけない表情をした17歳の少年たちである。

宮田莉朋

  • 2014年、日本のレーシングカートの最上位カテゴリー(KFシリーズ)で、阪口選手を破りチャンピオンを獲得する(15歳)。
  • 2016年はトヨタの若手育成プログラムの一員としてFIA-F4に参戦し、このカテゴリーの史上最年少優勝を果たしている
  • 並行して本年度までKFシリーズにも参戦を続け、2度目のチャンピオンを獲得した。

宮田莉朋公式ウェブサイト | レーシングドライバーの宮田莉朋
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阪口晴南

  • 2015年、レーシングカートKFシリーズでチャンピオンを獲得し、宮田選手への昨年の雪辱を晴らす(16歳)。
  • 同年、FIA-F4シリーズ2位で2歳年上の牧野任祐を押さえて鈴鹿サーキットのレーシングスクールを首席で卒業し、ホンダの育成ドライバーとなる。
  • 2016年はホンダの育成ドライバーとしてFIA-F4に参戦すると同時に、1999年生まれの中では唯一、一つ上のカテゴリーであるF3に参戦している

阪口晴南(サカグチ セナ) オフィシャルサイト SENA SAKAGUCHI
Sena Sakaguchi (@sakaguchi0709) | Twitter

17歳でF1デビューしたドライバー

彼らにとってF1は想像できないほど遠い世界ではない。と言うのも、彼らと2歳しか違わないF1ドライバーが現に存在し、しかも優勝争いを演じているからである。

2014年8月、F1チームの一つであるトロロッソが、当時まだ16歳の少年を翌年のレギュラードライバーとして採用すると発表した(デビュー時には17歳になっている)。ドライバーの名はマックス・フェルスタッペン。60年以上のF1の歴史の中で、それまでのデビューの最年少記録は19歳であり、それを大幅に更新するという事実は、当時のF1界に大きな議論を巻き起こすこととなった。

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間もなくF1に出場するための基準は見直され、フェルスタッペンのデビューの翌年からは18歳未満の出場は禁止されることになる。経験の不足したドライバーがF1に出場してしまうということを避けるための措置だった。もちろんこの決定には、経験面においても疑問視されていたフェルスタッペンの存在が影響している(シングルシーターの経験は1年のみ)。

しかし今年、デビューから2年目、18歳になっていた彼は、トップチームの一つであるレッドブルのレギュラードライバーに抜擢され、最初のレースであっさりと優勝してしまう。それまでの最年少優勝記録は21歳であり、それを約2年半塗り替える快挙だった。10代でも勝てるということを彼は証明してしまったのだ。

bettergear.hatenadiary.jp

フェルスタッペンの登場を抜きにしても、F1ではここ数年の間、19歳あるいは20歳のドライバーが続々とデビューしている。今年デビューしたエステバン・オコンは19歳。来季ウィリアムズチームでデビューするランス・ストロールは18歳だ。

今後も10代でのデビューというトレンドが継続することは濃厚であると思われる。それはつまり、モータースポーツの頂点と言われるF1を目指している若いドライバーたちにとって、その目標を達成するには高校生の段階で結果を残すことが至上命題となる、ということを意味している。

そして本日、FIA-F4、2016年度のチャンピオンが決定する

宮田と阪口のチャンピオン争い

説明したように、宮田莉朋と阪口晴南は共に、本年度FIA-F4という国内のシリーズに参戦している。

F4 JAPANESE CHAMPIONSHIP

そして、驚くべきことに17歳のこの二人がチャンピオン争いを演じている。昨年は20歳(坪井翔)と18歳(牧野任佑)の争いだったことを考えると、4輪フル参戦1年目の17歳の二人が争っているということの例外性を推し量ることは容易い。

そして、明日が、いや、もう日付が変わって今日が、2016年のFIA-F4シリーズの最終戦なのである。つまり、今日(2016年11月13日)の午前10時30分には、近い将来に黄金世代と呼ばれるであろう1999年生まれのレーシングドライバーたちの機先を制する者が決定している(レース開始は午前9時55分)。1999年生まれの選手では他にも、澤田真治、小高一斗などがこのカテゴリーに参戦しており、いずれも将来を嘱望されている。彼らにも注目したい。

その差は4ポイント

宮田選手が142ポイント阪口選手が138ポイントその差は4ポイント

順位に応じて与えられるポイントはF1と同じで、1位25ポイント、2位18ポイント、3位15ポイント、4位12ポイント、5位10ポイント、6位8ポイント、7位6ポイント、8位4ポイント、9位2ポイント、10位1ポイントとなる。

1位と2位の獲得ポイントの差が7ポイントなので、通常であれば、優勝争いの果てにチャンピオンが待っているということになるはずなのだが、今回、(詳しいことは省くが)予選順位の決定方法が通常と異なり、おそらくは宮田選手が27番手から、阪口選手が35番手からスタートすることになる。この順位からの優勝は難しい。優勝はおろか、表彰台すら、あるいはポイント獲得すら難しいのかもしれない。それゆえ宮田選手が圧倒的に優位に立っていると言える。

F4 JAPANESE CHAMPIONSHIP | FIA-F4 POINT STANDINGS(第13戦終了時点)

テレビなどでの視聴方法だが、参戦している選手の多くが10代であるようなシリーズなので、もちろんテレビの生中継は行われていない。F3であればUstreamで生中継されているが、FIA-F4にはそれもない。ありがたいことに、かろうじてTwitterで@fmotorが実況してくれている(Motorsports Forum (@fmotor) | Twitter)ので、わたしは毎回それに頼っている。

あとは午前9時55分を楽しみに待つのみ。